Painted Negativity 10 - 20
media/size: unique inkjet print on paper, inkjet print on transparent sheet, colored frame/ 34 x 34 cm
《Panted Negativity》は、手を使わずに制作される絵画
として考案された。《Panted Negativity》の特徴の一つに、
言語の基本構造のメタファーとして、2つの画面が対
になるという構造がある。その言語の構造とは、例え
ば単語などの言語を構成する単位の在り方である。2
つ以上の単位の存在を考えた場合、その価値(単語で
あれば意味)の決定は必ず単位相互の否定作用によっ
て為される。A はB でない限りにおいてA、B はでな
い限りにおいてB(A and B, A + B ⇔ A =¬B∧B =¬
A)。
《Panted Negativity》のもう一つの特徴は、先に述べた
ように、絵の具の垂れや滲みなど、絵画のもつ典型的
な現象を手を使わず生成するという点である。それは
以下の私の考えからもたらされた。それは、《Panted
Negativity》が言語の構造のメタファーとしてある以上、
その制作プロセスはアーティスト個人の属性と切り離
すべきである、ということである。
このシリーズでは、2011 年は抽象的な画像だけを、
2012 年からは、抽象化したポルノグラフィーを使用し
ている。ポルノグラフィーの使用は、言語のメタファー
としてのある絵画上に現れる現象に「エロティシズム」
を介在させることを可能にした。
そこで新しい特徴として加わったものは以下の機能で
ある。
[a] 鑑賞者の焦点が、視覚的な美しさだけにある場合、
鑑賞者にそれが美しいと感じさせる機能。
[a’ ] 鑑賞者が自分が見ているものが、女性器などのポ
ルノグラフィーだと感知した場合に、何を美しく、ま
た醜く感じるかという峻別に関与する、彼らの「審美
的基準= 倫理的整合性」に不協和をもたらす機能。
これはまた、言語にみられる普遍的な構造である、「表
示」と「内容」の不可分理性に亀裂を入れる試みでもある。
その意味では、上記の[a]、[a’ ] の機能はついには、言
語をそのメタファーやアナロジーとしてのみならず、
言語の機能そのものを直接操作していると言える。
2013 年より、対になって併置される画面を、二層構造
を持った一つの画面に統合した。その結果、キネティッ
クで彫刻的な側面が現れた。
photos by Aisho Miura Arts